U.S. Citizenship を取得した (Why 編)

Toshiaki Takada
Nov 11, 2022

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Certificate of Naturalization

前回、U.S. Citizenship を取得するまでの手続き等をまとめましたが、今回は「なぜ米国市民権を取ったか」「なぜ日本国籍を放棄したか」についてまとめました。

なぜ米国市民権を取ったか

日本の国籍法では原則二重国籍を認められてないので、外国籍の取得と日本国籍の放棄はセットで考えるのが前提です。この制限があるために外国籍の取得を躊躇している日本人は少なくないと思います。あえて分けて考えてみますが、なぜ私は米国籍を取りたいと思ったのでしょうか。

米国移民の最終到達地点

H1-b などのビザは layoff などで sponsor を失うと 60日以内に新たな employer が見つからなければ米国での滞在資格を失う、非常に不安定なものです。また米国の Green Card は年間の米国滞在日数が少ないと剥奪される恐れがある条件付きのものなのでこれも絶対ではありません。ですので、より安定した条件で米国に滞在するための市民権は米国移民の最終到達地点というのは言い過ぎではないと思います。今まで一緒に働いた会社の同僚(日本人以外)を見ていると Green Card を取得した後の市民権取得は当然の流れのように思われました。もちろん市民権取得した人だけが残っているという生存者バイアスもあるとは思います。いずれにしても、企業 sponsor で GC を取得した人は 5年で市民権取得の権利を得られるので、その時点で次のステップを考えるのはごく自然なことかと思います。

米国在住 20年以上

私は 2001年に渡米してからすでに20年以上、サンフランシスコベイエリアに住んでいます。現在の San Jose の家は 2007年に購入しすでに15年以上経っているので、すでに人生で一番長く住んでいる場所になりました。まだ日本に住んでいた期間の方が長いとは言っても直近 20年住んでいる米国のこの地域に愛着があるのはごく自然なことだと思います。

移民一世として

私には三人娘がいます。長女は日本生まれですが、3歳でこちらに引っ越してきたのでほとんどの時間を米国で過ごしてきました。下の二人の娘もこちらで生まれたので日本人というよりはアメリカ人です。みんな日本のことは嫌いではないですが、将来日本に住んで働いて生活するようなことは考えていないと思いますし、かなり難しいと思います。一方、アメリカには他に親戚がいるわけでもないですし、子供たちは我々両親がいなければ頼る人はかなり限られています。自分勝手に移民してきてアメリカでしか生活できないように子供を育てておきながら、歳を取ってから自分が楽に生活できる日本に帰って子供を外国に置き去りにしてくるのは正直無責任ではないかと思います。

選挙への参加

ご存知のようにアメリカ大統領選挙は、二大政党で国を二分して争う 4年毎に行われるアメリカ最大のイベント(エンターテインメントと言っても良い)です。また大統領選と大統領選のちょうど真ん中で行われる中間選挙 (midterm) も含めれば 2年毎に大きな選挙があり、大統領だけでなく知事 (governor) や市長 (mayor) の選挙なども同時に行われるところも多いです。Green card 保持者には選挙権は無いためにこのイベントには参加できません。もちろん在外邦人は日本国内の選挙に参加することは可能ですが、自分の住んでいない自治体の選挙に投票することに虚しさや無力感を感じる人も少なくないでしょう。むしろ私は自分の住んでいる国と自治体の選挙に直接参加したいと思っていました。

国歌斉唱

ここ数年私は Ice Hockey の game を良く見に行っていますが、試合の前にはかならず国歌斉唱(National Anthem) があります。国家を歌っている間は皆起立して帽子を取ります。恐らく米国の他のスポーツでも同じような儀式はあると思います。米国籍を持ってなかった頃私はいつもこれを外国の国歌として聴いていたのでそこではあまり気分が盛り上がりませんでした。ですので、これを自分の国の国歌として聴いた時には随分気分が違うだろうなと思っていました。

なぜ日本国籍を放棄したか

義務だから外国籍を取った時点で放棄するのは当然だろうというのはもちろんです。法的な義務はさておき、なぜ私は日本国籍を放棄しても良いと思ったのでしょうか。

日本の実家

私の父は私が大学生の時に亡くなりました。横浜にあった実家は私が小学 4年生の時から住んでいましたが、昨年土地も含めて売却しそれまで住んでいた兄と母は近くのマンションに引っ越しました。母はその後ケガをして寝たきりになり、現在は施設で暮らしています。私の帰る実家というのはもう日本に存在しません。

日本パスポートの維持は面倒

アメリカ国籍を取得すると Green card を失います。米国内で日本のパスポートを更新しようとすると、有効なビザもしくは Green card が無ければ更新することはできません。もし更新をしようとするならば、有効期限のあるうちに有効な日本のパスポートで日本に入国し、役所で住民票を入れ (日本に住んでるフリをして) パスポートを申請し、パスポートが取得できたらまた米国に戻る。というようなことを 10年に一回やればできそうだなというのは誰でも簡単に思いつきます。

相続手続きはもっと面倒

これは私が実際に経験したことですが、日本にいる親族の誰かが亡くなり相続をしなければならない時に困ります。というのは、日本にいる場合であれば、相続の手続きを行うには相続人が遺産分割協議書に印鑑を押し印鑑証明書を提出すればよいのですが、外国に住んでいる場合には印鑑証明書が取得できません。その代わりに領事館に行き領事館の職員の前で、遺産分割協議書に署名をし、その証明となる署名証明書を発行してもらう必要があります。また遺産分割協議書には現住所も書きますが、これを証明するための在留証明書を取得する必要があります。問題はこの在留証明書を取得するためには 1) 日本のパスポート 2) Driver’s license 3) Green card の 3つを提示する必要があります。前述した通り米国籍を取った場合にはすでに 3) を失ってますので、この時点で在留証明書を取ることは不可能になります。遺産を放棄すればいいのではないかと思うかも知れませんが、遺産を放棄するためにも協議書に署名する必要がありますので、そこを回避することは不可能だと思います。とすると残る手としては、パスポート更新と同様に日本に行って住民票を入れ、印鑑登録をして印鑑証明を取得する。このような手順を面倒だと思うかどうか。

つまり原則的に Green card の提示が必要となる全ての場面において不都合が生じることになり、かなり面倒です。

日本のパスポートは最良?

日本のパスポートは世界で最も良いと言われています。それはビザ無しで渡航できる国が最も多いからということです。アメリカのパスポートもビザ無しで行ける国は少なくはないですが、日本のパスポートよりは数か国少ない程度です。日本のパスポートではビザが不要でアメリカのパスポートでビザが必要な国は、中国、イラン、ベラルーシなどです。どうしても行く必要があればそれらの国もビザを取れば行けますので、そこまで大きな差はないのかなと思います。そもそも利便性を言うならば、パスポート更新が面倒だったり、米国滞在における不安定な状態の方がよっぽど不便なのではないでしょうか。

日本国籍を放棄することは日本を棄てることなのか?

人間の中身が突然入れ替わるわけではないので、そういうわけではないと思います。日本人はとかく生まれた時に得たものを失う(あるいは傷つける)ことを極端に忌み嫌うように思います。名前、性別、刺青(を入れること)やピアス、髪の毛を染めること、そして国籍。よくよく考えてみれば、それは子供の頃から刷り込まれた stereotype なのではないかと思います。変化に対して社会全体が寛容ではないというのはあると思います。国籍でさえ少し relax して考えると随分気分が楽になります。少なくとも後ろめたいことをしたなどとは思う必要は無いと思います。

実際、米国籍を取った後は特に大きな心境の変化はないですが、一通りの手続きを終えてただホッとしたというところです。

逃げれば一つ、進めば二つ

日本国籍を保持すれば日本人であることの benefit は失わないですが、外国籍を得ることによる経験も得られません。上に書いたような理由はどれも決定的なものではなく、必ずしも皆が同じような考えを持っているわけではないでしょう。難しい理屈はどうでもよくて、私にとっては単純にやってみたかったということに尽きるかと思います。人生は考えている以上に短いので、迷ったら前に進むのが良いのではないかと思っています。

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