U.S. Citizenship を取った (手続き編)
ご存知の通りアメリカ合衆国は移民の国です。私は2022年8月25日に Santa Clara, California において oath ceremony を受けアメリカ人に帰化しました(naturalization)。以下はそれまでに至るプロセスとその後の諸手続き等において私が経験したことです。
Background
私は 2001年から米国企業 sponsored の H1-b visa で米国で働いていましたが、2007年当時勤めていた会社からの sponsored で Green Card を取得しました。通常、企業 sponsored の GC の場合取得から 5年以上経過すれば米国市民権の申請を行うことができます。従って私の場合 2022 年 1月の時点で 14年以上経っていますので、この条件は qualify していました。
2022年 1月 3日 — Application for Naturalization
GC を取ったほとんどの人は、一度は市民権を取るのかどうか考えるでしょう。私は周りに何人か取得した友人がいて話を聞いていたのもあり、ここ数年いずれは取った方がいいかなという方向に気持ちは傾いていました。問題はいつ申請するのかというところで、次の GC の更新 (2027年) までにはやった方がいいだろうというのは漠然と考えていました。一方 9月までに日本のパスポートの更新が必要だったので、どうせならその前にやっておいた方が曖昧な期間が少なくて良いなと思い年明けから申請を始めました。
既に米国市民権を持っている私の友人は弁護士に書類を用意してもらって申請したと聞いていました。それも一つの option だとは思いましたが、まず具体的に何を準備する必要があるのか自分で調べた方が良いと思い web で検索したところ、ごく普通に USCIS の web site にたどり着きました。説明を読むと online でできるのが分かり全く難しくなさそうなので、申請を始めました。
上の link の page に申請に必要な情報はほぼ全て書かれているので “File Online” をクリックして必要な情報を入力していきました。詳細は割愛しますが、普通に今まで Green Card を取得できた人であれば、それと同等の情報 (家族情報、職歴、渡航歴等) が手元にあれば、一日もあれば終わる作業です。日本語で「米国市民権取得」で検索すると申請手続きをヘルプしてくれるような (もちろん有料で) 移民弁護士が沢山出てきますが、上記の USCIS の web site に書かれている英語が理解できるなら 3rd party に書類を用意してもらう必要はほとんど無いと思います。申請費用は $725 (うち biometric fee $85) で online の申請の最後に credit card で払うことができます。
2022年 1月某日 — Form I-797C
申請が終わってから 2週間ぐらいで、USCIS から2通手紙が届きました。一つは「N-400, Application of Naturalization を受領した、指紋などの biometrics 情報取得のための appointment を schedule するので別途 letter を送る」というもの。もう一つは「Biometrics 情報は以前 (GC 取得の時) のものを再利用するので appointment は不要、ただし $85 は返さない!」というもの。最初から分かってるなら $85 返してくれよという気もしないでも無いですが、文句を言ったところでどうにもならないのでスルー。
2022 年5月
この時点で USCIS からは何もアップデートが来ておらず、USCIS の web site で application status を check しても processing のまま変わってないので、いつどうなるかさっぱりわかりませんでした。このまま 9月に日本のパスポートが expire してパスポート無しで米国に滞在するのはまずいなと思いました。しかも pandemic 以降 San Francisco の領事館は完全予約制で appointment を取るのも難しい状況だったので、ギリギリになるって慌てるのは若干マズイと思い、万が一を考え日本のパスポートを更新するため領事館の予約を 6/1 に取りました。
2022年 6月1日
San Francisco 領事館でパスポート更新の申請を行いました。
2022年 6月 24日
San Francisco 領事館でパスポートを受領しました。実はこの前後で、USCIS から「Naturalization の interview を 8月 4日に schedule したから必ず来るように」という letter が届きました。Application の申請からおよそ 6ヵ月かかりました。
Interview では Civic Questions という 100問の質問の中から 10問質問が出る (その 10問中 6問正解すれば OK) テストがあり英語のテストもある、と言われてましたので Civic Questions の予習をはじめました。
2022年 8月 4日
Interview 当日。Santa Clara の USCIS office に若干緊張しながら行きました。入口受付で ID と appointment letter を見せたところ受付の女性が私の smart phone を指さしてなにか言っています。私は彼女の言っていることが(accent が強く)理解できずにこの smart phone が何かマズイのだろうかとまごついていたら、もういい行って行ってと言うので釈然としないまま security check の方に行きました。Security check を pass した後、また先ほどの女性が近づいてきてまだ何か問題があるのだろうかと不安に思っていたら「その phone case いいわね、ちょっと見せて」ということで、ややズッコケました。内心「こっちは緊張して人生の大事な appointment に来てんだから casual に話しかけんなよ。。」と思いましたがその場は笑って和やかにスルーしました。
Office の中ではすでに 10人程度の人が interview を待っていました。USCIS の interviewer は何人かおり順番に applicant を呼んで interview room に案内していました。中には interview が終わった後出てくる時に “Congratulations” と言われている人もおり「あぁ、無事にテストは pass したんだな」と思いました。
30分ほど待ったあと、私の名前が呼ばれ interviewer の office に案内されました。Interviewer は Asia 系の女性でした。部屋に入るとまず立ったまま右手の挙手そして Oath of Allegiance を行いました。それが終わり席に着くと基本的な情報の確認 — 氏名、生年月日、最後の US国外への渡航はいつかなど — の質問をされました。そのあと interviewer の女性は巨大な case file (厚さ 3cm くらいある)を取り出し必要な書類が揃っているかどうか確認を始めました。そこには、今までの私の immigration に関する膨大な資料があり、それをバラバラとめくり (日本の戸籍謄本のコピーらしいものも見えた)「Spouse との marriage certificate とあなたの birth certificate が無いけど?」と、申請の時点で submit してないことを指摘されました。その情報は Green Card 申請時に提出したものがあるハズでしたがそこでは見つからず、いずれにしても 1月の申請時点で提出しとくべきだったのでしょう。申請書類に不足があったということで若干焦りましたが、この interview が終わった後すぐに USCIS の web site から document を upload してくれれば process を進めるからということで、その部分の確認は skip しました。
それらが終わりいよいよ Civic Questions が始まりました。彼女は Computer に向かって例の 100問の中から適当に選んで一つ一つ質問してきました。私は最初の 6問を全部正解したのでそれで pass し残りは省略されました。続いて英語のテストが行われました。手元にある tablet を見るよう促されると、そこには英文が表示されていました。
“Who was the first president of the United States?”
まず reading と speaking のテストで、これを口頭で読みあげました。これが終わると今度は彼女が口頭で、
“The first president of the United States was George Washington.”
と言うので、それを tablet に手書きで書く listening と writing のテストでした。これらのテストを fail するのは相当難しいと感じました。
2つのテストは無事に pass して interview は終了しました。部屋に入ってから interview が終わるまでの時間は 30分もなかったと思います。最後に Naturalization Interview Results という1枚の紙を印刷して渡されました、そこには “A decision cannot be made yet about your application.” という checkbox に check が入っていました。つまり先ほどの書類の不足があったためにこの場では approved されなかったということです。そして Interviewer の女性に案内され office から出ました。
帰宅後すぐに保存してある marriage certificate と birth certificate を scan し PDF を USCIS の web site に upload しました。その時点では case status が pending だったのですが、翌日には case approval に変わり、無事に書類が accept されたことが確認できました。
2022 年 8月 12日前後
Interview からおよそ1週間後、USCIS から “Notice of Naturalization Oath Ceremony” の通知が届きました。その通知によると「8/25 の 8:30am から oath ceremony を行うから USCIS office の parking lot に来るように時間厳守」とのこと。Interview が schedule されるまで半年かかったのに、interview からわずか 3週間で ceremony とは随分早いなと思いました。余談ですが、この時期転職活動をしており次の仕事が 8/22 から始まる予定でしたのでその週は onboarding の training がありました。幸い schedule がぶつからなくて事なきを得たのですが、Oath ceremony もよっぽどのことが無い限り reschedule も難しいと思ったのでかなりヒヤヒヤしました。
2022 年 8月 25日 — Oath Ceremony
8:30am の appointment でしたが通勤時間だったのでギリギリ USCIS の parking lot に到着、すでに parking に入る前にかなりの車が並んでいました。Pandemic が始まる前 Santa Clara county で citizenship を取った人は Campbell の教会で ceremony を受けたという話を聞いていたのですが、この時は全て drive thru でした。
Parking に入るところで封筒をもらいました。そこには QR code が印刷されており smart phone で scan すると President of the United States からの video に redirect されます。
8:30 の appointment でしたが、結局列の先頭に到達するまで30分くらいかかりました。車に乗ったまま待っていると係の人が来て appointment letter を確認、またこの時同時に Green cardを取り上げられました。前に進むと先頭の 2, 3 列から車を降りて前の canopy の立ててあるところまで出るように促されました。そこで 20 人くらいの人が適当に立ったまま並び USCIS の officer の言う Oath of Allegiance を repeat し最後に “Congratulations!!!” で ceremony は終了。この間およそ 5分程度でした。
車に戻ると先ほど Green Card を取り上げた係の人が “Certificate of Naturalization” を持ってきたので受け取りました。これで正式に米国市民になりました。
さて、U.S. Citizenship を取ったと言っても Green Card を取り上げられてしまったので (仮に日本のパスポートを使ったとしても) U.S. の passport が無いと戻ってくることができません。私は oath ceremony の翌日に U.S. Passport application の appointment を取ろうとしたのですが、あいにく近所の USPS office は全然空いておらず唯一空いていた East San Jose にある Eastridge mallの土曜日の appointment を取ることができました。
2022年 9月 24日 — U.S. Passport Application
Passport 申請には、U.S. born citizen であれば birth certificate (原本) を提出すれば良いのですが naturalized citizen の場合、oath ceremony 時にもらった Certificate の原本を提出する必要があります。申請自体は全く問題無かったのですが、12月に日本に行く予定があったのでここでは expedite service を選びました。
2022 年 10月 21日— U.S.Passport 受領
申請からおよそ 4週間後に passport が届きました。これで国外に出られる準備ができたので日本行きの flight ticket を book しました。また、その 1週間後くらいに Certificate of Naturalization も届きました。
2022年 11月 7日 — 国籍喪失届の提出
ご存知の方も多いと思いますが、外国籍を取得すると日本国籍を失うことになります。在アメリカ合衆国日本大使館の「日本国籍喪失/離脱届」に関する説明を見ると
日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得した場合は、日本の国籍法の規定により日本国籍を失います。本人(代理の場合は配偶者または四親等内の親族)は、国籍喪失の事実を知った日から3ヶ月以内に届出をする必要があります。自己の意思で米国市民権を取得した場合は、その時点で日本国籍を失いますので二重国籍とはなりません。このことを知りながら既に取得した日本のパスポートを使用したり、新たに日本のパスポートを申請した場合は処罰の対象となります。
とあります。外国籍を取ったことが自動的に日本に通知されるわけではないので、届出をしていない人もかなりいると思われます。ただ、その場合は法に触れているという以上に今後いろいろ面倒くさいと思われたので、そこはきっちりしておいた方が良いと考え国籍喪失届を提出しました。
領事館の appointment は一か月以上前に取ってあったので、この日に必要な書類を持って San Francisco まで行きました。ちなみに必要な書類はこちらを見ると分かりますが、いろいろとモヤモヤします。まず 1) 国籍喪失届 2通と、3) 帰化証明書の和訳文 2通という、なぜ 2通同じものを書かされるのか、コピーでいいんじゃないだろうか。また 2) の Certificate of Naturalization の原本を持ってっているのだから和訳文などそもそも不要なのではないだろうか。さらに 5) の連絡先登録票というのも今まで在留届も出しているんだし、1) にも 3)にも似たようなことが書いてあるのに、まだ必要なのか (しかも手書き) という疑問だらけ。予想としては、1通は領事館で保管 1通は戸籍の登録されている自治体に物理的に郵送するのではないかと考えています。というのは、窓口の人の話によると国籍喪失届を提出してから、除籍謄本が取れるまで (戸籍に反映されるまで) 一カ月半かかりますという話。今時この大事な個人のメタデータが反映されるまでに一カ月半という、なんだか戦国時代に馬で伝令を送るような話だなと思いました。
申請時に、補足としていくつか聞いたことがあります。一つは、私が国籍を離脱することによって、家族の在留届に何か変更(申請)をする必要があるのか? これに関しては、便宜上私の妻の名前が筆頭になるが、特に法的に正式な書類ではないので何かする必要はない。もう一つは戸籍の内容が変わることによって、家族の誰かが日本のパスポートを更新するときに新しい戸籍謄本が必要なのかどうか? これについては本籍地が変わらないので新しいものを提出する必要は無いということでした。
おわりに
ということで、以上で一通りの国籍に関する手続きが終わりました。選挙に参加できるという以外は生活上特に変化は無いですが、そもそもどうして citizenship を取ろうと思うに至ったかについては、また別途書こうと思います。